最近話題のCBDとは?なぜ世界でCBDの注目が高まっているのか解説します
執筆者:高山 和子(薬剤師)
経歴:薬剤師として製薬会社等での勤務を経験。自身の製薬会社時代の経験からCBDの健康増進のポテンシャルに魅力と可能性を感じる。以来、作用機序や化学構造等、最新の論文やエビデンスをベースとした深い知見を有する。
はじめに
大麻草の成分の1つであるCBD(カンナビジオール)は、疼痛緩和やリラックス効果など体に良い影響が知られており、欧米を中心に医療や健康分野で活用範囲を広げています。
CBDについて認知しているものの、ニュースで取り上げられている大麻のイメージから、抵抗のある人もいるのではないでしょうか。
CBDの正しい知識をもつことで、日々のセルフケアアイテムとして安心して使用できるように、本記事ではCBDの概要や健康効果、CBD製品の種類について詳しく解説していきます。
CBDとは何か?
CBDは大麻草の茎や種子を原料として抽出される成分の一種で、医療や美容の分野で注目されている成分です。大麻由来成分でも、成熟した茎や種子は規制の対象外となるため、CBDは合法成分です。
一方、同じカンナビノイドで脳の過剰な興奮作用(ハイになる作用)があるTHC(テトラヒドロカンナビノール)は、大麻取締法に基づき日本で禁止されている違法成分です。
THCがわずかでも含まれていると規制対象になりますので、CBD製品を選ぶときはTHC検出検査がしっかりされているかを確認することをおすすめします。
CBDの略歴と起源
*CBDの抽出は、1940年にアメリカの研究室でロジャー・アダムス博士らによって初めて成功しました。その後「カンナビノイドの父」として知られるラファエル・ミシュラム博士に研究が引き継がれ、1963年に化学構造とその立体構成が明らかとなります。
*1940年代に行われたマウスを使用した薬理学的実験の中で、日本で違法成分とされているTHCの投与により酩酊作用(酔ったような状態)を示しましたが、CBDでは見られなかった報告されています。
長年の研究により、CBDの特徴や体内動態が明らかとなっており、現在はCBDを医薬品として採用している国もあります。
CBDの科学的基礎
CBDは体内のあらゆる場所に働きかけることで、作用を発揮しています。
ここではCBDの化学構造や、主な作用機序であるエンドカンナビノイドシステムについて詳しく説明していきます。
カンナビノイドとは?
カンナビノイドとは、大麻に含まれている化学物質の中で、生理活性のある物質の総称です。全部で104種類あり、炭素数12個のテルペノフェノール化合物であることが特徴です。
カンナビノイドには人工的に合成されたものや、体内で作られる内因性のものがあります。大麻由来のCBDやTHCなどは、他のカンナビノイドと区別するために「植物性カンナビノイド」と呼ばれています。
CBDの化学構造と作用機序
CBDの化学式はC21H30O2であり、同じ化学式であるTHCと分子構造は非常に似ていますが、原子配置が異なることで、生体反応も変化します。このわずかな違いにより、CBDには依存性やハイになる作用はないとされています。
CBDは体内にあるさまざまな受容体に結合して活性化(アゴニスト)させたり、不活性化(アンタゴニスト)させたりすることで、体内へ働きかけます。
CBDが働く受容体として、エンドカンナビノイドシステムに関わるCB1やCB2 の他に、セロトニン受容体やバニロイド受容体、GABAA受容体、アデノシンA2A受容体などが挙げられます。
エンドカンナビノイドシステム(ECS)とは?
ECSとは、体の恒常性(ホメオスタシス)を維持し、健康でいるために必要とされている体内システムです。
例えば、体温の低下時に、無意識に鳥肌や体の震えが起こることもホメオスタシスの機能のひとつです。その他にも睡眠や免疫、痛みなどを調節することで体のバランスを維持しています。
体内には「カンナビノイド(鍵)」と「カンナビノイド受容体(鍵穴)」が多く存在しており、それらの結合が引き金となって体の機能を調節しているのです。
カンナビノイド受容体には、中枢系に多く分布する「CB1」と免疫系や末梢神経に多く分布する「CB2」の2種類があります。カンナビノイドが全身に分布しているカンナビノイド受容体のいずれかに結合することで、体のホメオスタシスを保ちます。
私たち人間が、ストレスや環境変化などのダメージを受けても回復して生き抜くことができるのは、生命活動の基本のシステムであるECSが備わっているからといえるでしょう。
CBDの健康効果
CBDの健康効果には痛みの緩和やストレスの軽減、睡眠の改善も知られています。ここではそれぞれの効果の仕組みや、臨床結果についてお伝えします。
痛みや炎症の緩和
CBDには神経痛や関節痛など、慢性的な痛みや炎症を緩和させる働きが知られています。基本的に痛みの刺激は「上行性疼痛伝達系」と呼ばれるシステムによって脳へ伝達されます。
CBDの痛み緩和のメカニズムは、「バニロイド受容体」とよばれる痛みの伝導に関わる受容体を活性化させることで脳への伝達を抑えています。また白血球に直接働きかけることで炎症を抑えると考えられています。
痛みの緩和や抗炎症作用が示唆されるCBDは、筋肉痛のための外用の販売もあることから、今後新しいタイプの鎮痛薬として活用されることも期待できます。
ストレスや不安の軽減
CBDには自律神経を整え、気分を落ち着かせてリラックスさせることで、ストレスや不安の軽減につながることが期待されています。
CBDには、幸せホルモンと呼ばれる「セロトニン」の分泌を高める作用があります。
セロトニンはストレスに関わる「ドーパミン」や「ノルアドレナリン」のバランスを整えて気持ちを安定させる働きがあるため、CBDの摂取でセロトニン分泌が増加すると、ストレスや不安の軽減が期待できるのです。
睡眠の改善
CBDのリラックス効果により、睡眠が改善すると考えられています。
*2023年に日本抗加齢医学会総会で報告された研究によると、健康な男女10名を対象として30日間の睡眠状態を測定した結果、睡眠の質や入眠、睡眠の維持ともに有意に改善することがわかりました。
CBDは睡眠の質の改善だけでなく、睡眠時間にもよい影響を与えるといえるでしょう。
近年の研究と臨床試験の結果
日本でCBDを利用した臨床研究はほとんどありませんでしたが、近年医師や歯科医師を中心としたカンナビノイドの医療専門家グループにより症例報告がされています。
*症例の内容は、以下の2つが挙げられます。
- 末梢神経障害患者にCBDオイルを1日2回舌下投与したところ、使用開始の翌日より異常感覚の軽減を実感した。
- 帯状疱疹にCBDオイルの服用を開始後2週間で左胸の疼きが少し改善し、67日後には左胸の疼きが完全に消失した。
症状改善後にCBDオイルを中止してもなお、異常感覚や疼痛の再発なく推移していることが報告されています。
日本の病院やクリニックでもCBDの臨床研究が積極的に行われていることから、今後さまざまな病気の治療薬として活用範囲が広がることも考えられます。
CBDが世界で注目される理由
世界では、医療や健康、美容など幅広いジャンルでCBDが使用され、カンナビノイドの普及が予想されます。
ここでは、CBDを使用した自然療法やスティグマ(否定的な意見)の変化、大衆の関心の高まりなど、世界でのCBDの動向を紹介していきます。
自然療法のトレンドとしてのCBD
CBDはアメリカやヨーロッパを中心に、自然療法のトレンドとして注目されています。
*自然療法とは、伝統的な治療法と健康法の組合せから発展した医療体系のことであり、例としてはハーブやサプリメントの使用や運動療法が挙げられます。
不安やストレス、不眠などの日々の生活で生じる体の不調に、新しい健康法としてCBD製品を使用した自然療法が世界で広がっています。
長年のスティグマの変化
長年のスティグマは、大麻合法化により比較的大麻に対して抵抗がなくなったことで変化しました。
*また、2017年に行われたWHOの批判的審査で「CBDは治療の可能性を示すための科学的根拠があり、乱用や依存の報告はない」とされたことも、CBD研究が盛んになったきっかけです。
法律の緩和やCBD研究が進むことにより、大麻への否定的な意見が減少し、CBDへのマイナスなイメージが払拭されてきました。
大衆の関心の高まり
数年前からアメリカで健康志向の高い人を中心にCBDへの関心が高まり、その後ヨーロッパにも広がっていきました。
大麻の規制緩和でCBD製品購入のハードルが下がったことや、メンタルヘルスへの意識が向上したことを理由に、大衆の関心が高まることでCBDを手にする人が増えていきました。
2021年の世界のCBD市場規模は128億ドル(約1兆8133億円)であり、2028年には562億ドル(約7兆8733億円)を超える規模にまで成長すると見込まれています。
それに付随して、日本を含むその他の国における市場も拡大することが見込まれます。
医療大麻の合法化とCBDの関連性
アメリカ、カナダなどの先進国ではカンナビノイド由来の治療薬が承認されていますが、日本ではまだ承認されていません。
先進国で承認されているCBD治療薬の例として、難治性てんかん(レノックス・ガストー症候群やドラベ症候群)を適応症とした経口液剤が挙げられます。
日本でも大麻取締法の規制見直しや、2022年に治験を開始していることから、CBD医薬品の承認に近づいています。
CBD製品の種類
日本で販売されているCBD製品は、オイル・カプセル・ベイプ・飲料・ガム・グミ・クリームなどです。日本でCBDの認知度は高くありませんが、CBDカフェや専門店も都内にオープンしており、健康志向の高い人を中心に普及することが予想されています。
CBD製品は、抽出方法の違いによって効果の感じ方が異なるため、以下ではCBDの製法の違いについてご紹介します。
〈CBD製法の違いの表〉
アイソレート | CBD成分のみを抽出している。THCは含まない。 |
ブロードスペクトラム | CBD成分だけでなくCBNやCBCなど他のカンナビノイドやミネラルなども含んでいる。THCは含まない。 |
フルスペクトラム | THCを含めた大麻の成分が全て含まれている。 |
ブロードスペクトラムとフルスペクトラムには「アントラージュ効果」といわれる、複数の成分を摂取することで個々の効果が増幅される「相乗効果」が期待できます。
しかしTHC含有のフルスペクトラムは大麻取締法により禁止されているため、アントラージュ効果を期待したい場合はブロードスペクトラムであるかの確認が必要です。
CBDオイル
CBDオイルは、大麻草に含まれるカンナビノイドからCBDを抽出したオイルです。摂取方法はスポイトで直接舌の下に垂らしたり、飲み物などに入れたりすることが主流です。
舌下摂取の場合は30秒〜1分ほど待ってから飲み込みます。待つことで口内の唾液腺から効率よく吸収されるので、CBDの効果をより体感しやすくなるからです。
量の調節が簡単にできるオイルタイプですが、多く摂りすぎないように用法用量を守ることが大切です。
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CBDカプセル
CBDカプセルはCBDオイルをカプセルに封入したもので、1回量を正確に摂取することができます。また、カプセルに封入しているため、においや味が気になる人でも続けやすい剤型です。
CBDは消化管から吸収後、肝臓で代謝される工程を踏むため、摂取してから効果を感じるまで時間が必要ですが、効果の持続時間が長いことが特徴です。
CBDベイプ
CBDベイプはCBDリキッドを気化させて吸い込むための電子タバコのようなデバイスです。吸収率が高く効果の発現が早いことが特徴なので、わずかな休憩時間での気分の切り替えにおすすめです。
さまざまな香りのフレーバーがついているので、アロマテラピーのように鼻から抜ける香りに癒され、気分やシーンに合わせて使い分けることが可能です。
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CBD食品や飲料
ガムやグミ、チョコレートなどのCBDが含まれた食品や飲料タイプも販売されています。食品や飲料はライフスタイルに取り入れやすく、特にガムはオイルと同様に口内からの吸収の期待ができます。
普通の食べ物と変わらない見た目ですが、1日の必要量を守り、摂りすぎには注意しましょう。
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CBDバス・ボディケア製品は、クリームやオイルを気になるところに適量を塗布します。乾燥や肌トラブルのために使用したり、筋肉痛などのセルフケアに使用したりさまざまな用途で使用できます。
参考文献
※注意事項※
本記事内で紹介している海外論文や調査結果等は弊社製品に対するものではなくCBD等のカンナビノイドの成分に対するもので、弊社の製品の効果とは直接的な関係はありません。
また、日本においてCBDは医薬品および医薬部外品ではないため、疾患の予防や治療等には医師の指示を受けることを推奨しています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1760722/
https://jcannabisresearch.biomedcentral.com/articles/10.1186/s42238-021-00061-5
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jalliedhealthsci/9/2/9_112/_pdf
https://cbd-info.jp/cases/185/
https://www.ejim.ncgg.go.jp/public/overseas/index.html
http://cannabis.kenkyuukai.jp/images/sys/information/20200921103710-DB754AC13A95C5E225F5538C81E58E6C430926661E31BAE9EA764C859E33ECBA.pdf
https://cocoromi-mental.jp/cocoromi-ms/cbd/
https://www.gminsights.com/industry-analysis/cannabidiol-cbd-market
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