CBDを取ると鬱になる?メンタルヘルスへの効果と安全性を精神科医が解説

執筆者:大迫 鑑顕(精神科医)
経歴:千葉大学医学部医学科卒業。千葉大学大学院医学薬学府先端医学薬学 博士課程修了。大学病院や複数の総合病院で精神科医として臨床経験を積む。その後、国際医療福祉大学医学部精神医学部助教や千葉大学大学院医学研究院精神医学教室特任助教を務め、現在はスペインUniversity Hospital of Bellvitgeへ研究留学中。

目次

はじめに

CBD(Cannabidiol: カンナビジオール)は、そのリラックス、リフレッシュできる働きから、欧米を中心として、世界中で話題となっている大麻草などに含まれる成分の一つです。日本でも、CBDに関する話題が徐々に増えてきています。ネット上にはCBDに関する様々な情報があふれていますが、CBDと薬物乱用と関連付けたような、ネガティブな情報も多く、正確な情報は依然として多くはないと言えます。
今回は、CBDの期待できる効果やその根拠に関して再確認してみましょう。

CBDが鬱になるという科学的根拠はあるのか?

SNSを中心に、一部で「CBDを摂取するとうつ病になる」といった情報が出回っているようです。結論から言うと、CBDを使用しても、うつ病になるということはありません。CBD摂取によってうつ病になってしまう、という説には、「CBD」と「大麻」の用語としての混同が原因としてあげられるかもしれません。

CBDは、大麻草の成熟した茎や種子のみから抽出・製造されたものです。大麻には、CBD以外にも、ビタミンやホルモンのように微量で私たちの体に影響を及ぼす物質である生理活性物質が500種類以上の生理活性物質が含まれていて、精神活性作用や違法性があるのはTHC(Tetrahydrocannabinol: テトラヒドロカンナビノール)と呼ばれる物質です。THCは、いわゆる「ハイ」になる作用を持っていて、マリファナの原料にもなっており、その劇的な精神作用から日本を含む多くの国々で規制対象となっています。CBDは、THCとは異なり、そのような精神活性作用はもたらさず、日本国内の法律においても大麻取締法上の「大麻」には該当せず、問題なく使用できます。

海外では複数の研究で、大麻の使用とうつ病の発症の関連が検討されています。カナダのグループによるメタ解析研究では、青年期(11歳~20歳)の大麻使用が、若年成人期(15歳~39歳)のうつ病の発症の一因となる可能性があることを指摘しています1。オーストラリアの研究グループは、14~15歳の1601人の生徒を7年間追跡調査して、特に10代の少女が大麻を頻繁に使用すると、その後のうつ病や不安障害を発症する可能性が高くなると報告しています2

一方で、CBDはうつ病の治療への適応が検討されている状況で、複数の研究でCBDによるうつ病治療のメリットが報告されています。(ただし、CBDがうつ病治療に対して決定的に有効であるという確証を得られるまでには至っておりません3。)

ともかく、これらのような大麻の使用とうつ病発症の関連の可能性の指摘が、CBDの使用とうつ病発症の関係があると誤解されてしまっている可能性が考えられます

CBDのメンタルヘルスへの効果

そもそも、中央アジアを原産とする植物の大麻は、大麻が持つ陶酔作用や鎮痛作用が紀元前から知られており、様々な儀式や医療目的で使用されてきた歴史があります。古来より、インドや中国では、大麻は薬草として伝統医療で活用されてきました。

現代医学においては、1964年にTHCが大麻の精神作用を司る主成分として同定され、その後、1990年代にTHCが作用するエンドカンナビノイドシステム(Endocannabinoid System: ECS)が発見されていきました。我々人間が身体の外から受ける環境や内部の変化に関わらず、身体の状態(体温・血糖・免疫)を一定に保つシステムのことをホメオスタシス(生体恒常性)と言いますが、このエンドカンナビノイドシステムが、ホメオスタシスの維持や様々な疾患の発症に関与していることが徐々に解明されており、エンドカンナビノイドシステムを疾患の治療へ活用していくことへの期待が高まってきています。

主な成分の一つで、精神活性作用も持たないCBDを、様々な治療に適応しようという取り組みは、2000年頃からその動きがみられるようになり、当初は、抗てんかん作用、鎮静作用、抗不安作用、抗精神作用などに関連したものが中心でした。次第にCBDの作用が解明されていき、近年特にCBDに関連する科学文献が顕著に増加していて、精神疾患に対する作用に加えて、様々な神経障害の治療や症状緩和のために、CBDの研究が行われています。

今回は、科学的根拠に基づいて、CBDの精神面に対して認められている効果を紹介していこうと思います。


不安を解消する効能がある

一つ目として、CBDには不安を解消する効果が期待できます。

アメリカの研究では、社交不安障害の治療においてCBDの抗不安効果があっただけでなく、精神疾患を持たない健康な成人にCBDを使用しても不安改善効果があったと報告しています4。精神科や心療内科では、社交不安障害などの不安に対する治療として、一般的に抗うつ薬や抗不安薬が使用されることが多いですが、代表的な副作用として抗うつ薬は食欲不振、抗不安薬は眠気、など、さまざまな副作用が問題となることが多いです。この研究では、CBDは健康な成人に対しても眠気や認知機能障害などの目立った副作用がなく使用でき、不安への効果も認めたとされております。その他にも、様々なヒトの臨床研究や動物実験で、CBDの不安解消への効果が示されています5

CBDが体内でどのように代謝されて、どのようにその効果を発揮しているのかはまだ解明されていない部分が多いですが、この不安解消に対する効果は、CBDが脳内の不安に関連したセロトニン受容体(5-HT 1A 受容体)などに作用することで効果を示すと考えられています6。不安障害とはじめとした精神疾患に対する使用に関しては、その用法や用量に関してさらなる研究が必要な段階にあります。


集中力を向上させる

二つ目に、CBDは集中力を向上させる効果が期待できます。

ブラジルの研究グループが、ヒトおよび動物の認知機能に対する、CBDの短期的、もしくは長期的投与の影響を分析した研究の系統的レビューを行うことによって、CBDの認知機能への効果と安全性を検討しています。その中で、健康な成人のCBDの使用に関して、短期的な使用でも長期的な使用でも、集中力の向上(認知処理機能への効果)が期待できること、さらには、動物実験レベルでは、CBDの認知処理機能への明らかな効果が報告されていることを示しました7

先ほどから対比されるTHCは、その使用により認知機能や記憶にも問題が生じることが知られています。しかし、同じ大麻成分でもCBDとは人体への作用機序が異なります。THCは摂取すると直接脳内へ作用するため、大きな精神作用や脳機能への影響を与えるのに対して、CBDは体内の内因性カンナビノイドを活性化することによって間接的に関わるため、脳への影響がそこまで劇的ではありません。ここで、「カンナビノイド」とは、大麻草に含まれる化学物質の総称で、THCやCBDはそのうちの一つです。カンナビノイドのうち、体内で自然に生産されるものが内因性カンナビノイド(エンドカンナビノイド)と呼ばれます。内因性カンナビノイドのうち、主に体内で機能していると考えられているのは、AEA(anandamide: アナンダミド / arachidonoylethanolamide: アラキドノイルエタノールアミド)と2-AG(2-Arachidonoylglycerol: 2-アラキドノイルグリセロール)です。

CBDはAEAや2-AGを破壊する酵素を抑制することで間接的にAEAや2-AGを増加(内因性カンナビノイドを活性化)させる作用がある一方で、THCは直接的にAEAや2-AGなどの内因性カンナビノイドと同様の作用をもたらすため、脳への影響も大きくなってしまいます。内因性カンナビノイドの役割は完全に解明されているわけではありませんが、エンドカンナビノイドシステムを介してホメオスタシスの維持を行っていると考えられています。先ほどお示ししたブラジルの研究でも、CBDは認知機能に悪影響を及ぼすことはなかった、と示され、その安全性が確認されています。


ストレス緩和効果がある

三つ目に、CBDはストレスを緩和する効果が期待されています。

先ほど、「不安を解消する効果がある」の所で登場したセロトニンは、ストレスと関連する脳内のホルモンとして知られています。セロトニンの役割は様々で、恐怖や不安といったストレスをコントロールする役割や、ドパミンやノルアドレナリンといった脳内ホルモンの分泌を抑制して脳の興奮を抑えることで、ストレスを軽減させて精神をリラックスさせる役割などもあります。また、セロトニンは脳内に働きかけて、覚醒を促す作用もあります。

仕事や人間関係、育児に関する悩みなどの精神的ストレスが続くと、セロトニンが減少して、その働きが悪くなります。朝起きにくくなったり、怒りっぽくなったり、自律神経のバランスも悪くなるので、身体全体に様々な不調が出現する可能性があります。CBDはセロトニン受容体などに作用することが知られていますので、その結果、ストレスを緩和することも期待できると考えられます。

CBDの安全性

ここまでもCBDの安全性に関して一部触れてきましたが、科学的研究においてはCBDの安全性はどのような位置づけになっているのか確認してみましょう。

アメリカのFDA(Food and Drug Administration: アメリカ食品医薬品局)が、CBDの使用に関して、アメリカ国内の規制や安全性に関してまとめています8。その中で、CBDの使用に際して多かった副作用は、頭痛、めまい、ふらつき、下痢、吐気との記載があります。CBDを使用してこれらの症状が出現した場合、CBDの使用は控えることが望ましいでしょう。

イタリアの研究グループが、CBDの副作用、有害事象に関して文献をレビューする研究を行っており、その中で、全ての臨床研究の結果を総合すると、CBDの使用は安全性に大きな問題はなく適切な用量であれば重篤な有害事象はほとんどないことを示しています9。ただし、何かしらの基礎疾患があり、CBD以外の薬剤を服用していて、それを併用する場合は注意が必要であることが指摘されています。

これらの情報を総合すると、CBDの使用に関して安全性に大きな問題はないものの、CBD以外の薬剤の併用に関しては、適切な医療者の指示を仰ぐ必要があると考えられます。

アメリカでは処方箋として利用されている

アメリカでは、2018年にCBDは医療用CBDオイル製剤が、小児の難治てんかんであるドラベ症候群とレノックス・ガスト症候群の2例に処方可能となりました。

EU諸国でもこれに続いて、CBDが治療薬として承認されている国があるようです。

アメリカ国内においては州ごとに大麻に対する対応が異なっていますが、基本的には、嗜好用大麻および医療用大麻が違法となる州であっても、THCを含有していないCBDやCBDオイルは処方箋なしで自由に購入できます。

CBDは、これまで述べてきたように、リラクゼーション作用のあるサプリメントとして普及していて、オイル以外にも、食品、飲料など、様々な形態での製品が流通しています。

日本国内では、CBDやCBDオイルは処方箋なしで購入できる状況で、合法的に流通しています。治療薬としては、一部の疾患に対して治験を行っている最中で、一部の医療機関でCBD製品を治療目的で推奨しているところもあるようですが、過去の科学的研究から十分な効果が担保されているとは言えず、今後のさらなる研究が望まれているところです。

まとめ:CBDはメンタルヘルスに有効と言われている

ここまで振り返ってきた通り、CBDはメンタルヘルスにおいて、様々な側面でその有効性が期待できると言えるでしょう。特に、不安、ストレス、集中力など、現代社会で社会生活を営んでいく上で避けることができない心身のストレスから来る影響を緩和できる可能性があります。使用上の安全面においても、重篤な有害事象が目立たないというのは、安心して使用できる理由の一つとなるのではないでしょうか。

参考文献

  1. Gobbi G et al. Association of Cannabis Use in Adolescence and Risk of Depression, Anxiety, and Suicidality in Young Adulthood: A Systematic Review and Meta-analysis. JAMA Psychiatry. 2019 Apr 1;76(4):426-434. doi: 10.1001/jamapsychiatry.2018.4500.
  2. Patton GC et al. Cannabis use and mental health in young people: cohort study. BMJ. 2002 Nov 23;325(7374):1195-8. doi: 10.1136/bmj.325.7374.1195. 
  3. Pinto JV et al. Cannabidiol as a Treatment for Mood Disorders: A Systematic Review [Article in French]. Can J Psychiatry. 2020 Apr;65(4):213-227. doi: 10.1177/0706743719895195. Epub 2019 Dec 13. 
  4. Fliegel DK et al. Systematic literature review of human studies assessing the efficacy of cannabidiol for social anxiety. Psychiatry Res Commun. 2022 Dec;2(4):100074. doi: 10.1016/j.psycom.2022.100074. Epub 2022 Sep 13.
  5. Kwee CMB et al. Anxiolytic effects of endocannabinoid enhancing compounds: A systematic review and meta-analysis. Eur Neuropsychopharmacol. 2023 Jul:72:79-94. doi: 10.1016/j.euroneuro.2023.04.001. Epub 2023 Apr 23.
  6. O’Sullivan SE et al. An update on PPAR activation by cannabinoids. Br J Pharmacol. 2016 Jun;173(12):1899-910. doi: 10.1111/bph.13497. Epub 2016 May 19.
  7. de Lima Bomfim AJ et al. Effects of the Acute and Chronic Administration of Cannabidiol on Cognition in Humans and Animals: A Systematic Review. Cannabis Cannabinoid Res. 2023 Dec;8(6):955-973. doi: 10.1089/can.2023.0086. Epub 2023 Oct 4.
  8. FDA Regulation of Cannabis and Cannabis-Derived Products, Including Cannabidiol (CBD), https://www.fda.gov/news-events/public-health-focus/fda-regulation-cannabis-and-cannabis-derived-products-including-cannabidiol-cbd
  9. Madeo G et al. Update on Cannabidiol Clinical Toxicity and Adverse Effects: A Systematic Review. Curr Neuropharmacol. 2023;21(11):2323-2342. doi: 10.2174/1570159X21666230322143401.

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